社会調査 (I)〔前〕


〔講義の概要〕
 
私たちの日常は直接経験できない事柄の報道に満ちている。ということは,何が正しい情報で,どれが誤ったものなのかを常に判断することなしには生きてゆけないことを意味している。つまり,モノを書く「書き手」にとってだけでなく,彼女ら/彼らによって書かれたものを読む「読み手」にとっても,調査によってもたらされる情報を選択し批判的に解読する眼力が不可欠なのだ,ということである。社会調査について学ぶ意義は,まずもってこの点にある。本講義では,1年間を通して,調査をもとに語られる「事実」や「報告」をどう読み解いたら良いのかを軸に,社会調査について考察する。具体的な作品の解読と講師自身が行ってきた現地調査の体験を素材に,進める予定である。必ず堀川の担当する「社会調査(II)」とセットで履修すること。

〔講義の構成〕
1 <フィールド>へ(1)
 社会調査の意義と用途,調査と調査論,調査の目的と種類(統計的調査,事例調査など)
2 <フィールド>へ(2)
 統計調査と事例調査,データ収集と分析
3 社会調査の考古学――社会調査の史的展開(1)
 社会学と社会調査史
4 社会調査の考古学――社会調査の史的展開(2)
 無作為抽出法への展開,国勢調査と官庁統計などの展開
5 社会調査の考古学――社会調査の史的展開(3)
 踏査とフィールドワーク
6 社会調査の基礎(1)
 量的調査と質的調査,統計的調査と事例研究法
7 社会調査の基礎(2)
 調査倫理とプライヴァシー,守秘義務と誠実さ,学会での倫理綱領,千葉大学実習事件の教訓
8 社会調査の基礎(3)――「客観性神話」と「構成された事実」(1)
 ウェーバーと理解社会学
9 社会調査の基礎(4)――「客観性神話」と「構成された事実」(2)
 「純然たる事実」と「解釈された事実」
10 社会調査の基礎(5)――「客観性神話」と「構成された事実」(3)
 実証主義と解釈主義
11 社会調査の基礎(6)――「客観性神話」と「構成された事実」(4)
 解釈の公準
12 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(1)
 W.F. Whyte ([1943] 2000)『ストリート・コーナー・ソサエティ』(1):その理論的主張と時代背景
13 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(2)
 W.F. Whyte ([1943] 2000)『ストリート・コーナー・ソサエティ』(2):方法論からのレヴュー
14 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(3)
 吉川徹(2001)『学歴社会のローカル・トラック――地方からの大学進学』(1):変化をどう跡付けるか
15 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(4)
 吉川徹(2001)『学歴社会のローカル・トラック――地方からの大学進学』(2):量的方法の可能性を中心に

〔教科書〕
(1)石川淳志・佐藤健二・山田一成編(1998)『見えないものを見る力:社会調査という認識』,八千代出版。
(2)佐藤郁哉(2002)『フィールドワークの技法:問いを育てる,仮説をきたえる』,新曜社。
(3)森岡清志編(1998)『ガイドブック社会調査』,日本評論社。

〔参考文献〕
講義中に随時指示しますが,さしあたり下記を挙げておきます:
(1)クリフォード+マーカス編著,春日直樹他訳(1996)『文化を書く』,紀伊國屋書店。
(2)佐藤郁哉(1992)『フィールドワーク:書を持って街へ出よう』(ワードマップ),新曜社。
(3)小池和男(2000)『聞きとりの作法』,東洋経済新報社。

〔受講生への要望〕
(1)私語をしないこと
(2)毎回,資料を配付するので,必ず出席すること
(3)講義時間中に配付する「質問・感想カード」には率直に自分の意見・質問を表明すること
(4)指定された文献は必ず読んでくること
(5)必ず堀川の担当する「社会調査(II)」とセットで履修すること

〔評価の方法と基準〕
 
学期末試験で評価します。出席はとりませんが,資料を配付するのできちんと出席しなければ,単位取得は不可能だろうと思います。「社会調査の論理の基礎的事項を,自分の言葉で論理的に論述できるか」という点を重視します。また,出席回数や就職内定の有無,大会出席等の事情は一切,評価・考慮の対象になりません。詳しい説明はガイダンス時にお話ししますので,必ず出席のこと。

 


社会調査 (II)〔後〕


〔講義の概要〕
 
私たちの日常は直接経験できない事柄の報道に満ちている。ということは,何が正しい情報で,どれが誤ったものなのかを常に判断することなしには生きてゆけないことを意味している。つまり,モノを書く「書き手」にとってだけでなく,彼女ら/彼らによって書かれたものを読む「読み手」にとっても,調査によってもたらされる情報を選択し批判的に解読する眼力が不可欠なのだ,ということである。社会調査について学ぶ意義は,まずもってこの点にある。本講義では,1年間を通して,調査をもとに語られる「事実」や「報告」をどう読み解いたら良いのかを軸に,社会調査について考察する。具体的な作品の解読と講師自身が行ってきた現地調査の体験を素材に,進める予定である。必ず堀川の担当する「社会調査(I)」とセットで履修すること。

〔講義の構成〕
1 社会調査の基礎――その方法と設計(1)
 量的調査の基礎と設計
2 社会調査の基礎――その方法と設計(2)
 全数調査と標本調査,サンプリングと誤差,無作為抽出と「でたらめ」
3 社会調査の基礎――その方法と設計(3)
 仮説の構成,調査票・質問文の設計
4 社会調査の基礎――その方法と設計(4)
 質的調査の基礎とインタビューの仕方
5 社会調査の基礎――その方法と設計(5)
 調査票の配付・回収と実施上の注意点
6 社会調査の基礎――その方法と設計(6)
 調査データの整理,データクリーニング,コーディング
7 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(1)
 P. Willis ([1977] 1985) 『ハマータウンの野郎ども――学校への反抗・労働への順応』(1):仮説と概念を中心に
8 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(2)
 P. Willis ([1977] 1985) 『ハマータウンの野郎ども――学校への反抗・労働への順応』(2):方法論的にとらえかえす
9 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(3)
 佐藤郁哉(1984)『暴走族のエスノグラフィー――モードの叛乱と文化の呪縛』(1):シカゴ学派の遺産と量/質論争
10 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(4)
 佐藤郁哉(1984)『暴走族のエスノグラフィー――モードの叛乱と文化の呪縛』(2):方法論的「背骨」を抽出する
11 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(5)
 佐久間充(1984)『ああダンプ街道』(1):社会問題と学術的調査の実施
12 作品の社会調査論的解読――調査の種類と実例(6)
 佐久間充(1984)『ああダンプ街道』(2):医療調査方法論との比較においてとらえる
13 調査結果をどう作品化するか――仮説の構成から論文発表まで
 フィールドノーツ,データの解釈,作品化過程での検証項目,など
14 社会調査の実施とその後
 調査倫理と調査実施の困難性,データのデーターベース化,公開と再利用,被調査者との関係
15 そして再び,<フィールド>へ――調査・認識論・身体性
 解釈と認識論的自己検証,フィールドに立つということの身体性,結論

〔教科書〕
(1)石川淳志・佐藤健二・山田一成編(1998)『見えないものを見る力:社会調査という認識』,八千代出版。
(2)佐藤郁哉(2002)『フィールドワークの技法:問いを育てる,仮説をきたえる』,新曜社。
(3)森岡清志編(1998)『ガイドブック社会調査』,日本評論社。

〔参考文献〕
講義中に随時指示しますが,さしあたり下記を挙げておきます:
(1)クリフォード+マーカス編著,春日直樹他訳(1996)『文化を書く』,紀伊國屋書店。
(2)佐藤郁哉(1992)『フィールドワーク:書を持って街へ出よう』(ワードマップ),新曜社。
(3)小池和男(2000)『聞きとりの作法』,東洋経済新報社。

〔受講生への要望〕
(1)私語をしないこと
(2)毎回,資料を配付するので,必ず出席すること
(3)講義時間中に配付する「質問・感想カード」には率直に自分の意見・質問を表明すること
(4)指定された文献は必ず読んでくること
(5)必ず堀川の担当する「社会調査(I)」とセットで履修すること

〔評価の方法と基準〕
 
学期末試験で評価します。出席はとりませんが,資料を配付するのできちんと出席しなければ,単位取得は不可能だろうと思います。「社会調査の論理の基礎的事項を,自分の言葉で論理的に論述できるか」という点を重視します。また,出席回数や就職内定の有無,大会出席等の事情は一切,評価・考慮の対象になりません。詳しい説明はガイダンス時にお話ししますので,必ず出席のこと。