■ 社会調査実習〔SRP〕(通年) ■


〔講義の概要〕
 本実習は,「都市ガヴァナンスの社会学的実証研究」と題し,具体的な問題を抱える地域社会をフィールドワーク型の社会調査によって把握・分析することを通して,学生に社会調査の全プロセスを経験させ,質的調査法のいくつかを拾得させることを目的とする。
 「都市空間の変化は,誰にどのような影響を与えるのか。そして,その変化はどのような過程を経てコントロールされるのか」――これが,この実習を主導する問いである。今日,都市空間を無秩序な変化に任せず,何らかの形で規制・コントロールすべきであることについては世界的なコンセンサスができている。しかし,計画によって都市空間が問題なくコントロールされてきたかと問うならば,答えは否である。「市場の失敗」と「政府の失敗」を経た今日,「都市空間の変化はどのような過程を経てコントロールされるのか」を問おうとするなら,ガヴァメント=行政的規制ではなく,ガヴァナンス=統治の状態としてとらえる必要がある。本実習では,景観保存問題を具体的事例とし,実際にある観光都市・北海道小樽市の再開発に関与した行政,デヴェロッパー,不動産業者,住民,NPO/NGOといった諸アクターに対して半構造化されたインタビューおよび景観の定点観測調査を行い,そこで得られた定性データを分析する。最終目標は,報告書の作成である。

〔講義の構成〕
 年間の組立は大枠としては以下の3段階に分けられる。すなわち,(1)4〜8月の準備期,(2)9月の現地調査,(3)10〜3月のデータ分析・報告書の作成期,である。履修学生とTeaching Assistant (TA)を加えた全員で現地調査合宿を行ない,データを収集し,報告書作成までの全ての調査過程を体験させる。(1)4〜8月の準備期では,主に文献資料の検討を行なう。キャンパスでは主に文献資料の検討を中心に行い,問題領域の知識習得を図り,学生個々人のテーマ・問題意識を深化させ,現地調査に備える。(2)現地調査では,ヒアリング調査と景観定点観測調査(景観変化パネル調査)の2つを中心にする。再開発に関わる主要アクターにそれぞれグループでヒアリングを行う。あわせて,市役所内関係部課においてヒアリングと文書調査を行う。さらに,1997年以来,堀川研究室で継続的に調査している景観変化パネル調査を行なう。これは,歴史的建造物全276棟と,中心市街地活性化の政策課題対象地域となっている商店街全114店舗のパネル調査である。
 より具体的には下記のように実施する予定である:(a)オリエンテーション,(b)調査対象地域に関する概観,(c)ゲスト講師の講話,(d)調査テーマの決定,(e)テーマ毎にグループ分け,(f)グループ討論,(g)現地調査(合宿),(h)ヒアリング・ノートの整理,(i)定点観測データのデータベース化,(j)グループ毎にデータ分析,(k)報告書原稿の執筆と資料篇の編纂,(l)報告書の刊行,(m)内容報告会。

〔教科書・参考文献〕
 片桐新自編(2000)『歴史的環境の社会学』(シリーズ環境社会学 3),新曜社など,多数。詳細は,開講時に文献リストを配付します。

〔受講生への要望〕
 受講生には,(1)毎回出席すること,(2)各回の課題やデータ整理・分析に付随する作業課題を着実に果たすこと,(3)必ず現地調査に参加すること,(4)チームワークへの貢献,の4点が求められます。受講可能最大人数は12人程度です。受講希望者多数の場合は選考を行ないます。また,必ず,堀川の担当する「調査研究法 B」をあわせて受講すること。

〔評価の方法と基準〕
 学期末に提出してもらう論文で評価します。通常の授業での発言の量と質も,当然ながら評価の対象になります。