■環境社会学〔前〕■
〔講義の概要〕
この講義は,日本における環境問題の歴史的展開と近年台頭してきた環境社会学について概説することを目的としています。しかし,内容と対象が広範にわたるため,「環境社会学〔前〕」では,「環境問題の社会学」を対象として取り上げ,「環境社会学〔後〕」では「環境共存の社会学」を取り扱うことにします。前者は環境をめぐって深刻な健康被害が生起していて,それをめぐって対立・紛争が起こっている状況をとらえてゆこうとする領域です。後者は,深刻な被害や対立はない(あるいは見えない)けれど,これからの環境問題を考えるうえでヒントになるような,人々の環境との上手な折り合いの付け方・作法を,具体的な空間の中に見出してゆく指向をもった領域です。両者が合わさって,環境社会学を構成しています。
本講義では,戦後最大の公害・環境問題といわれる水俣病を取り上げてその詳細な事例研究を行い,「環境問題」の内実を理解します。さらに,そうした「環境問題」を学問的に把握・分析しようとして産み出されてきた「被害構造論」「社会的ディレンマ論」といった理論を検討します。〔教科書〕
(1)飯島伸子(1993)『環境問題と被害者運動〔改訂版〕』,学文社。
(2)霜野・関根・有末編(1996)『社会学入門』,弘文堂。
(3)飯島伸子(1995)『環境社会学のすすめ』(丸善ライブラリー161),丸善。
(4)舩橋晴俊・古川彰編(1999)『環境社会学入門:環境問題研究の理論と技法』(社会学研究シリーズ:理論と技法 25),文化書房博文社。〔参考文献〕
講義中に随時指示しますが,さしあたり下記を挙げておきます:
(1)飯島・鳥越・長谷川・舩橋編(2001)『環境社会学の視点』(講座環境社会学第1巻),有斐閣。
(2)George, Timothy S. (2001) Minamata: Pollution and the Struggle for Democracy in Postwar Japan (Harvard East Asain Monographs 194). Cambridge, MA: Harvard University Asia Center.〔英文ですが,極めて平易な文章で明快に論じてありますから,十分に読みこなせるはずです〕
(3)栗原彬編(2000)『証言 水俣病』(岩波新書新赤版658),岩波書店。
(4)飯島伸子・舩橋晴俊編(1999)『新潟水俣病問題:加害と被害の社会学』(現代社会学叢書),東信堂。
(5)緒方正人・辻信一(1996)『常世の舟を漕ぎて:水俣病私史』,世織書房。
(6)色川大吉編(1995)『新編・水俣の啓示:不知火海総合調査報告』,筑摩書房。
(7)飯島伸子編(1993)『環境社会学』(有斐閣ブックス660),有斐閣。
(8)原田正純(1989)『水俣が映す世界』,日本評論社。
(9)原田正純(1972)『水俣病』(岩波新書 青版B-113),岩波書店。
(10)飯島伸子著・飯島伸子先生記念刊行委員会編(2002)『飯島伸子研究教育資料集』,飯島伸子先生記念刊行委員会(A4判501頁;在法政大学多摩図書館)〔受講生への要望〕
(1)私語をしないこと
(2)毎回,資料を配付するので,必ず出席すること
(3)講義時間中に配付する「質問・感想カード」には率直に自分の意見・質問を表明すること
(4)指定された文献は必ず読んでくること〔評価の方法と基準〕
学期末試験で評価します。出席はとりませんが,資料を配付するので毎回出席しなければ,恐らく単位取得は不可能だろうと思います。 「事例と理論の核心を的確に把握し,それに対する批評を自分の言葉・方法で論理的に論述しているか」という点を重視します。また,出席回数や就職内定の有無,大会出席等の事情は一切,評価・考慮の対象になりませんのでそのつもりでいてください。詳しい説明はガイダンス時にお話しします。
■政策事例研究(=環境社会学〔後〕)■
〔講義の概要〕
この講義は,前期開講の「環境社会学」講義の言わば続編で,重要事例の政策への含意を検討することに焦点をあてて進めます。換言すれば,環境社会学,とりわけ「環境共存の社会学」という視点から事例を検討し,その事例の持つ広義の政策的含意を検討するものです。 具体的には,各地のまちづくりや環境保全を取り上げてその詳細な事例研究を行い,「環境共存」の内実を読み解いていきます。さらに,そうした「環境共存」の実践を学問的に把握・分析しようとして産み出されてきた「生活環境主義」「歴史的環境の社会学」といった理論・立場について概観します。
〔教科書〕
(1)舩橋晴俊・飯島伸子編(1998)『環境』(講座社会学第12巻),東京大学出版会。
(2)鳥越皓之(1997)『環境社会学の理論と実践:生活環境主義の立場から』,有斐閣。
(3)鳥越皓之編(2001)『自然環境と環境文化』(講座環境社会学第3巻),有斐閣。
(4)片桐新自編(2000)『歴史的環境の社会学』(シリーズ環境社会学 3),新曜社。〔参考文献〕
講義中に随時指示しますが,さしあたり下記を挙げておきます:
(1)飯島・鳥越・長谷川・舩橋編(2001)『環境社会学の視点』(講座環境社会学第1巻),有斐閣。
(2)堀川三郎(1999)「戦後日本の社会学的環境問題研究の軌跡:環境社会学の制度化と今後の課題」『環境社会学研究』第5号,pp.211-223,環境社会学会。
(3)陣内秀信(2001)『イタリア 都市と建築を読む』(講談社+α文庫E-29-1),講談社。
(4)嘉田由起子(1995)『生活世界の環境学:琵琶湖からのメッセージ』,農文協。〔受講生への要望〕
(1)私語をしないこと
(2)毎回,資料を配付するので,必ず出席すること
(3)講義時間中に配付する「質問・感想カード」には率直に自分の意見・質問を表明すること
(4)指定された文献は必ず読んでくること〔評価の方法と基準〕
学期末試験で評価します。出席はとりませんが,資料を配付するので毎回出席しなければ,恐らく単位取得は不可能だろうと思います。「事例と理論の核心を的確に把握し,それに対する批評を自分の言葉・方法で論理的に論述しているか」という点を重視します。また,出席回数や就職内定の有無,大会出席等の事情は一切,評価・考慮の対象になりませんのでそのつもりでいてください。詳しい説明はガイダンス時にお話しします。