● 社会制度からの変革 ● 高橋 淑子
<1.貧しいということ>
私はもう研修を目的として海外旅行するのは四度目だが、今考えてみると、今回のエチオピアほど自分のあらゆる感覚がその国の文化や生活にそぐわないものだと実感したことはなかった。これはある意味自分にとってはかなり重要なことで、自分の価値観に大きく疑問を持ち、変えていくきっかけとなった。国民一人当たりのGNP(1999:世銀)が100ドルという国はどんなものなのか。とにかく、エチオピアの抱える貧困問題を前にして、何をするにもよく考える必要性と責任が伴っているということを強く自覚し、行動することを学んだことがこの旅での意義であると思う。
初め、子供達と仲良くなっても最終的に集まってくる大勢の人から急に「金!」とさんざん言われること、お金がもらえる対象として扱われることにひどくがっかりして、友達になることにもそんなに「金が必要か?」なんて考えてしまっていた。当然安易にお金はあげられない。最貧国と言われるこの国では何より金が必要で、金が無いから生活が今危機に迫っている。だから、特に私たちのような若い外国人旅行者がお金持ちに見えてもおかしくはない。私たちの社会では自分たちは決して金に余裕ある人間ではないのに。経済的な水準の低さはそれほど深刻でそれ以外にも生活の隅々まで影響を及ぼしていて、あらかじめ資料や統計で学んでいたとは言え、出会う一人一人がそのような立場に立たされていることに自分の想像が追いついていなかったということである。
並列させるのはおかしいかもしれないが、種類が違うとはいえ私達にも貧しさがある。それは旅行した学生がよく分かっている通り、現地大学生カサイやマハリ、ムズたちやNGOを立ち上げた学生などには、物事に対する姿勢、例えば宗教、勉強に熱心で、まっすぐ将来について考え、「自分で行動する力」の強さを感じた。また、経済的に裕福な日本に住んでいることを含めて、生きていく中で一体何が幸せで結局何が価値あるものなのかということへの理解・解釈にきっと私達は貧しいのだと思う。一日一日の生活が大変だったりする状態でも、最高に楽しく生きることを見せてくれたエチオピア人に対する印象は今でもとても大きい。
<2.私たちにできること>
同じこの世界に住む住人でありながら、明らかな不公平が私達と彼らにはある。たぶんその違いは、辿ってきた歴史によったり、地理的なものによったりしているのだろうが、一人の人間として生まれたことには変わりは無いはずなのに、生活にははっきりとした偏りがある。
密接な関係を持つ資源と経済の問題がある。私たちには当たり前の水洗トイレ・トイレットペーパーだが、今急速に発展している中国が私達と同じようにほぼ完全にそれを整備したら、世界中から木が消えるという例がある。とても遠い将来のこととは思えないし、この一つの例だけでも資源の枯渇を引き起こすという、それほど深刻だということだ。今の社会の仕組みを考えると、経済的により早く発展した国勝ちで、貧しい第三世界はそのままでいてもらわなければ、資源的にこの世界は成り立たないということになってしまう。近いうちに環境に配慮された有力な技術が開発されて、全ての国が発展し、人類が皆、何不自由の無い幸せな生活を送ることを期待できるだろうか。飢餓や貧困、エイズなどの問題を抱えるエチオピアの被害は、決して私達の生活と無縁ではない。
援助とは何か。この社会では、私たちがしたように、お金がなくて売春婦になってしまいそうな子を一人助けることが、「一時的」であり、何の根本的な解決にもならないことであるのを実感したように、国家的な援助とは、この社会制度でたった一時的なことであるのかもしれない。自分たち先進国の生活を変えないでいるまま行う援助に関しては。
私にとって、この旅の大きな意義は「私達にはたいしたことができない」という事実を知ったことだ。だからこそ今現在、「私達にできること」とは、間違ったことをしないよう心がけることで、社会に無関心で生きていかないことである。さらに、もう少し積極的に自分が行おうとすると、これまでの生活を見直さなくてはならない。それは最低限のお金しか持たず、最高に楽しく過ごす人からのヒントによって自分の価値観を見直すことだ。
社会制度の変革が起きる日は、新たな価値観を身につけ、何が悪くて、どんなことがしてはいけないことなのかという評価を再設定できたときに起こる。そして、今現在、そういったことに気づいている人はそう少なくないのではないかと思っている。
<3.感想>
もう一つの大きな意義はエチオピアという国を身近に感じたことである。みんなで歌ったり、踊ったりして過ごしたことは最高の思い出だ。エチオピア人は、私たちに笑顔を向けたり、もてなしてくれた。また、本来の人と人とのつながり、コミュニティーの信頼関係の深さを見せてくれた。どんなに貧しくても、あったかい心を持ち続けながら助け合って生きている人がいるということを確認できたのはとてもうれしいことである。
楽しく生きていくというのはとても大事なことである。また、身近な人を大切にすることも大事なことだ。この社会はまだまだ完全でないことを忘れてはいけない。なぜなら、理不尽な国の政策に毎日泣き叫んで抗議をする人が日本にだっているし、自分の気持ちとは照らし合わせずに仕事として物事を行う人、さらに金儲けしか頭にない人がいなくならないからだ。油断していると世の中が曲がってきていることに気がつかないでしまうことになる。エチオピアを初め、世界全体を考えて、身の周りのことから何か変えられないか考えながら生活していきたいと思った。
● エイズ孤児たちは・・・ ● 林 智子
エチオピアから帰国後、とあるテレビ番組を目にした。TOKIOが司会を務め、「一万円で何ができるか」をテーマにしたものだった。国によって貨幣価値が違うこと、円の重さを最初はバラエティに取り上げていた。そして、最後にカンボジアのエイズ孤児たちの施設が映った。カンボジアでは一万円あれば、約30人の子供たちの命を繋ぐことができる。今はNGOの支援により、ひとりひとりに薬が援助されているようだった。たった一万円で変わってしまうかもしれない子供たちの未来・・・。カンボジアでこれだけエイズ孤児の問題が深刻だとすれば、HIV/AIDS感染者数が世界第3位であるエチオピアは果たしてどうなのか。
感染者数で上回るのは、インドと南アフリカだけだ。2001年に発表された公式統計によるエイズ孤児数はなんと75万人である。最近の統計では、2014年には210万人に達するであろうことが示されているが、その数は更に増大する可能性がある。そんなエイズ大国に行っておきながらもほとんどその現状を目の当たりにすることができなかったので、いかにエチオピアとエイズの根強い結びつきができてしまっているか、どんなことがこの国でおきているのかを調べてみたいと思う。
<NGO「希望の夜明け」(Dawn of Hope)>
2001年8月5日、エイズ孤児と共に数千人が、政府に対して、安いエイズ治療薬の輸入を要求するデモを行った。これが先駆けとなり、急速に拡大するエイズによる孤児を支援するための新組織が2002年に設立されることとなった。組織はエイズウイルスによって両親を失った子供たちを対象とするものになる。目的は基金を設立して子供たちのために使うことだ。
<説教と警告>
エチオピア正教を何よりも重んじる国だ。その総主教が国民の最も神聖なる日を記念する説教の中で、エイズの感染拡大を警告した。エチオピアの顕現日を祝う説教の中で、コミュニティに対し、ウイルスの犠牲者たちに手を差し伸べ、憐れみを示すよう求めたのだ。この彼の説教が、エチオピア赤十字協会がこの疾病との闘いを強化する、という誓いに繋がった。
<5歳以下>
保健省によると、エチオピアで5歳以下人口の内、25万人がHIV/AIDSに感染している。母親が結婚前に検査を受けることが無く、その母親から感染することが要因とされている。政府は現在直面する問題の中で最も困難なもののひとつとし、国際社会に助けを求めている。世界銀行は既に5900万米ドルをこの危機に立ち向かうための資金として融資した。
<エイズによる経済的影響について>
危機の大きさはあまりにも明らかである。何百人もの人々が死に、彼らの子供たちは孤児となり、コミュニティ全体が破壊された。しかしながら、アフリカの経済活動をマヒさせる影響については、まさに今、警鐘が鳴らされ始めたところに過ぎない。エチオピアでは、将来的な国の発展の希望を担い、大々的に広報されている貧困削減計画書についてのダメージも懸念されている。
<そして・・・>
若年層に、HIV/AIDSに関するカウンセリングと検査を呼びかける大キャンペーンが、エチオピアで始められることになった。
このキャンペーンは、若年層の6人に1人(約16%)がHIV/AIDSに感染している、エチオピアの4つの主要首都で実施された。若者たちこそが、この感染症の拡大阻止の闘いを変えていく中心となる存在なのだ。
また、UNISEFの支援により、性感染症の治療のためにFGEAのセンターを訪れる若者に保険サービスを行うプロジェクトも行われている。
表面上では、あまり実感する機会がなかったエイズによる深刻な被害だが、エチオピアの未来は、感染拡大に対する強力かつ迅速な対策に懸かっているといっていいだろう。
● 食糧問題について〜JICA ● 米山 顕子
私たちはJICAエチオピア事務所を訪れた。その時頂いた資料、うかがったお話をもとに報告します。
<エチオピアと飢餓>
エチオピアは世界で最も貧しい国として知られている。
WHOによると常に200万人位が飢えていて、2002年は20年来の最悪の年で1,300万人が飢えにより苦しめさせられた(※しかしその翌年の2003年は大豊作であった・・・それでも7〜800万人が飢えている)
どこで、どれくらい足りていないのか(市場調査)わかれば・・・ → 儲かる → 民間企業が動き出す |
<対エチオピア援助実績(2003年度)>
@一般無償 第二次幹線道路改修計画(国際2/3) 第二次遠隔地教育機材整備計画 |
13,52億円 1,96億円 |
Aノンプロジェクト無償 | 5,00億円 |
B食糧援助 | 2,00億円 |
C草の根無償(17件) | 1,38億円 |
DUNICEF経由ポリオ撲滅計画 | 3,60億円 |
E技術協力 | 11,51億円 |
合計 | 38,97億円 |
<エチオピアNGO>
Agri-Service・・・農村のコミュニティの問題解決
ある程度の提案をし、結果どうなったかでその後も進めていく。
最初は識字を広めようと動き出す → うまくいかず。
→ 貧困や教育、農業すべてを含む問題解決を目指す。
→ 食料中心に変更(2000年〜)
・村落の訓練(一番の基礎は、やはり農民自身がすること。援助する―されるでわかれない)
・最も貧しい所にターゲットをしぼる
・村落に根付いた組織
・調査は村人自ら行わせる。
・ネットワークの連携
・村人とのコミュニケーションも重要(言葉を事前に学んでおくなど)
<これからの協力で重要な事>
JICA,Agri-Service共に挙げているように、自立する事が大事である。援助を受け、助けてもらうだけでは依存心も生まれるし、いつ援助がストップしてまたふりだしに戻るのではそれまでの援助が水の泡である。ただ、自身のみで自立する事が不可能なため現在の状況(貧困、飢餓など様々な問題)に至っているので、自立する事を助けることが重要である。
そして、地域、コミュニティとの密接なやり取り、信頼関係も成功するか否かにかかっているように思われる。