|
経 済 数 理 基 礎 1999年度期末試験問題 |
1. 政府の環境規制の文脈を考えよう。今、ある国で(製品の生産に際して)公害を発生する企業が、きれいな空気
(clean air) を生み出している。その際、達成されるアウトプット (clean
air) の価値は、高いか低いかのいずれかで
ある企業固有の公害抑止技術(能力)、および企業の公害抑止努力に左右される。特定化して、企業の努力が e
のときに生み出されるきれいな空気 y の質 は、もし企業の公害抑止技術が高ければ 1+e 、低ければ e である
としよう。 e の努力水準によって、企業は(その公害抑止能力レベルに関わらず) (1/4)e2 の費用を被る。
よって企業のペイオフは π = W - (1/4)e2 と書ける。ここで、Wは(生み出したきれいな空気の質の水準 y に
依存した)企業が政府から受け取る金銭的報酬 (monetary transfer) である。また、企業の留保利潤はゼロ
であるとする。さらに、情報構造として、企業は自分の公害抑止技術(能力)の水準を知っているが、政府は、それが
半々の確率で高いか低いかであるという情報しか知らないとする。
(1) ベンチマークとして、政府と企業の間に情報の非対称性が存在しない時のファーストベストの努力水準と
賃金水準を求めよ。
(2) 情報の非対称性が存在する時、政府が提示する政策(環境規制スキーム)が満たすべき条件を述べなさい。
(重要な条件を2つ指摘すること。)
(3) (次善の)最適規制スキームを求めなさい。それによって引き出される企業の公害抑止努力水準は
(1) のケースと比べてどういう違いがあるか?その直観はなにか?
図解もせよ。
(4) 近隣地区の企業の潜在的公害抑止技術はやはり高いか低いかのいずれかであり、上とまったく同じ構造を
しているとする(完全相関のケース)。いま、政府は両企業生み出すきれいな空気の質を比較することにした。
いかなる報酬スキームを提示するのが最適か? それによって引き出される努力水準は
(3) と比べて
どう変化するか?
2. 売手と買手の部品取引関係を考える。売手(またはサプライヤー)の事前の投資
(ex ante investment)を
I とし、事前の投資は製品(部品)の品質、したがって買手にとっての価値 (value)
に影響を与えると仮定する。
買手の部品に対する事後的価値 (ex post value) は v(I) = 3I - (1/2)I2 とする。したがって、取引価格を
p とすると、取引 (trade) の生じるケースでの買手の余剰は v(I) - p である。また、サプライヤー(売手)の
余剰は p - c - I である(ここで、 c < 1/2 は一定の生産コストである)。 I (従って v )は買手にとって観察可能
だが、法廷に対しては立証不可能 (unverifiable) であり、従って契約の中に特定化
(specify) することは
不可能であるとする。
(1) ファーストベストの投資水準を求めなさい。
(2) 事前契約は書けずに、両者はナッシュバーゲニング解 (Nash Bargaining solution) にしたがって
事後的に交渉するとする。投資は最適か?
(3) (2) の設定で、サプライヤー(売手)が事後的 (ex post) に価格を選ぶ権利を与えられるとどうなるか?
バイヤー(買手)にその権利が与えられるときはどうか?
(4) I は事後的に外部に対してもある程度通用する、つまり、投資 I は、他の買手と取引する時にも
I/3 の
価値をもち v (I/3) の収益を生み出すとする。この時、売手の投資のインセンティブはいかなる影響を
受けるか?図と式の両方を使って正確に説明せよ。
3. 以下の問いに答えよ。
(1) 次のゲームのナッシュ均衡を混合戦略まで含めてすべて求めよ。ただし、プレーヤー1は行(TまたはB)を
プレーヤー2は列(LまたはR)を選び各セルに記されている数値は(プレーヤー1,2の利得)である。
|
L
|
R
|
T
|
2,
2
|
1,
5
|
B
|
4,
3
|
0,
0
|
(2) (1) のゲームのルールを変えて、プレーヤー1が行動をとった後、プレーヤー2はそれを観察して自分の行動を
決めるものとする。このゲームの展開形をゲームの樹を使って図示せよ。そして、どの部分が部分ゲーム
(サブゲーム)にあたるのか図上で示し、最後に部分ゲーム完全均衡を求め、ゲームの樹の上に示せ。
(3) (2) のゲームの標準形(戦略形)表現を書き、そのナッシュ均衡(利得)を○で囲みなさい。その中で、
「プレーヤー2の意味のない脅し(ハッタリ)にプレーヤー1が屈した均衡」に相当するものに★を記しななさい。
4. 2企業A,Bが同質な製品を生産している。両企業が大量に生産すればするほど価格は下落し、特に価格
p と
総産出量 q の間には p = 13 - q の関係がある。製品を1単位生産するごとに費用が1ドルずつかかる。
T.
(1) 両企業は市場で1回だけ出会うとした時、私的利潤最大化を目的に行動すると、均衡において各企業は
どのくらいの量の製品を生産することになるか?
(2) 各企業が協調して結合(共同)利潤最大化を行えるとした時の、各企業の生産量と利潤は何か?
(3) 今度は、各企業は無限の期間にわたって1期あたり1回づつ、繰り返し出会うとしよう。各企業の割引要因
を δ として、各企業が将来の利潤を十分大きく評価するならば、(2)
の生産量の組をナッシュ均衡として
達成可能であることを具体的に示せ。
U.
(4) この2企業が価格で競争する(ベルトラン競争)時の均衡を求めよ。
(5) Aを先手、Bを後手とする数量競争のシュタッケルベルクゲーム(逐次手番ゲーム)の部分ゲーム
(サブゲーム)完全均衡を求めよ。
Back
|
|