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ゼ ミ 生 |
1998年度鈴木ゼミナール優秀論文
「日本の学歴社会:シグナリングモデルと人的資本モデルによる分析」
遠藤 英彰
本論文は、筆者の学生、塾講師としての経験の過程で自然と持つに到った「なぜ日本人はこんなにも必死に高学歴を
求めようとするのか?」という問題意識をもとに、日本の学歴社会、または‘高学歴志向’社会をじっくりと分析した“労作”
である。彼は、まず学歴社会の起源、生成、確立のプロセスを分かりやすくサーベイし、これまでの代表的な見解、
論争史も適切に紹介した。その上で、高学歴志向社会を、ゼミで学習した「シグナリングモデル」を「日本型モデル」に
改良して説明を試みた。次に、高学歴の人が入社後に高ポスト、高賃金を得ているという観察データを示し、それを
人的資本(Human Capital)を蓄積したことへの報い(対価)として捉える「人的資本モデル」を使って理論的に検証した。
次に、この将来の状況を考えて、親は、仮に(シグナリングモデルの意味での)自分の子供の「能力」が低くても、それに
投資する、つまり生まれてからの18年間?にお金と時間をかけて必死に教育して‘高能力’にし(mimic!)、本来なら
高能力の人だけが選ぶはずの‘高学歴’を、(低能力かもしれない)子供と共同で選ぶ、または選ばせるという(ゲーム
理論的な)均衡もありうるということを理論的に示し、これが、日本の高学歴志向社会でかなり起こっていることなのでは
ないか、そこに過剰な受験戦争も含めたかなりの非効率性も生まれているのではないかという見解を示した。その上で、
日本の学歴社会の変わっていくべき方向への推測なども示した。これは教育制度、学校制度全般の改革も含めた
大きなテーマであり、筆者の今後の様々な局面での再考、再々考などに任せることにしたい。
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